あさひる

[雑記]
朝、まだ羊がぐるぐる周っている頭で新聞を眺めていると、こんな社説が目に入った。

朝日新聞2008年3月9日朝刊 社説後段「マイクロソフト―大転換から日本も学ぼう」
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

少し前に朝日新聞が「MSがソースコードを公開」と誤報を流してちょっとした騒ぎになったのを覚えていたので、気になって読んでみるとツッコミどころがあまりにも多い。というか、記者がまったく勉強していないんじゃないかこれ。

>パソコンソフトの巨人、米マイクロソフト(MS)が「創業以来の大転換」に踏み切った。秘中の秘としてきた基本ソフト「ウィンドウズ」や応用ソフト「オフィス」などのプログラム情報を、無償で公開すると発表したのだ。

まず「プログラム情報」ってなに。そんな言葉聞いたことないですよ。新しい言葉を造るんならきちんと説明してから使ってください。
あと、OSのこと「基本ソフト」って呼ぶのやめませんか。わざわざ曖昧な言葉で言い換えて、OS=基本ソフトっていう誤解を招くだけですよ。


>たしかに、ウィンドウズの心臓部である「ソースコード」の公開を見送るなど未練がましい面もある。だが、IT(情報技術)分野で加速する枠組みの大変化に、さすがの巨人も抵抗できなかった、という大きな構図でとらえたい。

すごい。すごすぎる。ソースコード非公開を「未練がましい」ってあんた。20年以上に渡って、コストを大量に投入して研究したノウハウがつまった貴重な財産であるソースコードをおいそれと公開できるわけないでしょう。


>つまり、特定の企業が知識や人材を囲い込み、商品を特許などで守りながら独占的に販売する。そんな「閉じた」経営や開発の手法が行き詰まってきた。
>思えば、MSは妙な企業である。21世紀を担う先端的なIT製品を世界中へ送り出しながら、体質のほうは20世紀によく見られた古い独占志向の企業だからだ。20世紀と21世紀の境目を体現しているようにも見える。

なんとも妙な文章である。オープンソースは21世紀的でプロプリエイタリは20世紀的?GNUは1989年に制定されたものだし、UNIXはもっと昔に配布された。


>この変化を日本企業はどう受け止め、対応したらいいだろうか。

さて、ここからが明らかにおかしい。なぜ日本企業の話になる?


>他の製造業でも、ネットワーク型の連携が始まっている。米ボーイング社は新型旅客機「787」の開発で、秘中の秘だった設計ノウハウなどを
協力企業の三菱重工業東レに公開した。開発能力を高め、性能の向上を図るためだ。

後半部分は(その存在自体が)全体的におかしいが、特に変なのがここの部分。
筆者はMS Shared Source Initiativeを知らないのだろうか。MS
は以前から一部のソースコードを公開しているし、(当然秘密保持契約の下に)パートナーにはAPIや仕様書を公開している。だいたい、開発に必要な仕様書を協力企業に公開するのって、別に「21世紀的」でもなんでもないと思うのだが・・・。


>地方の中小企業でも、独自に海外まで結びつきを広げ、成功している例がいくつも登場している。

朝日お得意の論理飛躍。むしろ前の話と断絶している。どこから海外の話が出てきたんだろう。


>なんでも囲い込んで上下関係で縛る時代から、オープンで対等な協力関係が多くの実りを生む時代へ。グローバル競争のなか、産業のあり方が世界規模で大きく変化している。日本の産業も体質を切り替えていかなければならない。

なんというか、この部分を書きたかったから後半の無理な飛躍があるようにしか思えない。確かに、MSがオープンソースを敵視しないと宣言し、仕様書を一般に公開したのはそれなりに大きな方向転換だけど、別に他の産業に関わる話ではない。ましてや、日本の産業にいったい何の関係があるというのだろう。